佐藤春夫(さとう・はるお)
明治 25年(1892)
昭和 39年(1964)
大正 昭和
詩人 作家
慶應義塾大学
三田2-15-45

三田文学
明治25-昭和39(1892-1964)。詩人、作家。慶應義塾大学中退。生田長江(いくたちょうこう)、与謝野寛らに師事し、『スバル』『三田文学』などに詩を発表。大正7年(1918)の小説『田園の憂鬱』、大正10年の詩集『殉情詩集』で注目を集めました。芥川賞の選考委員を昭和35年(1960)の第1回から務めたことでも知られています。晩年には門人3000人といわれるほどの文学界の大御所になりました。
三田で過ごした自由気ままな学生時代
明治43年(1910)、歌人の与謝野寛の主宰する「新詩社」で知り合った詩人の堀口大学とともに慶應義塾大学予科に入学。同級生は佐藤、堀口を含めて3人だけでしたが、文学部の教授には永井荷風、先輩には水上滝太郎、久保田万太郎らがいました。『三田文学』で次々と詩を発表するものの、創作と交友活動に熱中するあまり大学には5年8か月在籍して1学年しか進級していません。
自伝では「芝公園を出て新橋駅待合室経由パウリスタ(銀座のカフェ)というのが我々の定期行路となっていた」と学友たちと過ごした日々を振り返り、また当時の芝公園について「まことに公園らしく閑静に趣のふかい土地で、今の東京タワーの西あたりにあった池の藤などは実に美しく、われわれは時を忘れてその下にいた」と述べています。大学退学後は『西班牙(スペイン)犬の家』『美しき町』など独自の美意識に基づいた小説を発表し、20代にして文壇の寵児となりました。
◎参考文献
『日本人名大辞典』(講談社)
『作家の臨終・墓碑事典』(岩井寛編/東京堂出版)
『作家の自伝12佐藤春夫』(日本図書センター)
『田園の憂鬱』(岩波文庫)
『美しき町・西班牙犬の家』(岩波文庫)
『小説智恵子抄』(角川文庫)
『昌子曼陀羅』(講談社文芸文庫)

『新潮日本文学アルバム 佐藤春夫』(新潮社)
『文人暴食』(嵐山光三郎/マガジンハウス)

永井荷風より佐藤春夫宛葉書